グレート・リタ/愚冷刀凛汰(逢坂鈴汰)のプロレス専門ブログ。団体は新日本、W-1。選手は武藤敬司、グレート・ムタ、飯伏幸太、棚橋弘至、中邑真輔、内藤哲也、真田聖也、その他新日本、W-1勢など。Twitter :@rita_osaka
※今回からタイトルを変更しました。
以前の記事も新タイトルに修正します。
連載小説『RYUSEI』
序章
4
若林康夫は、強かった。
レスリング技術は隆也に分があったが、若林康夫の強さは技術ではない。
分厚く鍛え上げられた体のタフさと、その中に宿る心の強さである。
強い体に、強い心を宿した戦士。
まさに『プロレスラー』そのものだった。
その若林が。
若林よりも、そして隆也よりも小柄な若者に、敗れた。
立ち合いは、若林が優勢だった。
その体格差を最大限に活かすため、大きく踏み込んで組み合った。
すぐさま腕を相手の頭に回してヘッドロック。
がっちりと抱え込む。
決まった、と誰もが思った。
しかし相手の若者は、ヘッドロックをかけられながらマットを蹴り、そしてポストを蹴り、宙を舞った。
くるりと宙返りをするように、コーナーからリング中央へと飛ぶ。
若林は体勢を崩されそうになり、思わずヘッドロックを外す。
完全に自由になった若者は背後から若林の左腕に飛びつき、その太い左腕を抱いた。
ぶら下がるように若林の左腕を伸ばす。
(飛びつき腕十字……!)
実際のプロレスの試合で、それもジュニアヘビー級の一線級の選手が魅せるような、実に見事な飛びつき式腕ひしぎ十字固めだった。
ここまで綺麗に決められて、それでもギブアップを拒んだ若林だったが、最後はレフェリーストップで若者に軍配が上がった。
試合後、アイシングをする若林とそれを見守る隆也のもとに、対戦相手の若者がやってきた。
「あの、すいません。大丈夫でしたか? 思ったよりエグい角度で入っちゃって、申し訳なかったです。初めてやったもので、あの技」
隆也と若林は目を見開いた。
あの見事な飛び関節を、今日初めてやった?
「若林さんみたいな大きくて力のある人を、どうしてもグラウンドに引き込む自信がなくて。案の定あっという間にヘッドロックに取られたんで、これはもうやるしかないなと思ったんです」
「完敗です」
若林の差し出した手を、若者はがっちりと両手で握った。
深々と頭を下げて握手を終えると、若者は隆也に向き直った。
「新藤隆也さん、でしたね。一回戦の腕ひしぎ、お見事でした。俺は内田 晋太郎(ウチダ・シンタロウ)。ここ上田道場の門下生です。よろしくお願いします」
すっ、と差し出される手。
その手を、隆也は躊躇なく握り返した。
「谷口ジムの新藤隆也です。あなたとの勝負を、楽しみにしています。……決勝で会いましょう」
内田は何も言わず、ただ笑顔でうなずいて、体育館の外へ去って行った。
(内田晋太郎……か)
ふう。
息を吐く。
そこで初めて、自分の表情が硬直していることに気付いた。
ぴしゃりと両手で頬を叩き、ストレッチを始める。
次の戦いも、気を抜けない。
しかし、心はすでに、その遥か先にいる内田晋太郎を見据えていた。
(つづく)
以前の記事も新タイトルに修正します。
連載小説『RYUSEI』
序章
4
若林康夫は、強かった。
レスリング技術は隆也に分があったが、若林康夫の強さは技術ではない。
分厚く鍛え上げられた体のタフさと、その中に宿る心の強さである。
強い体に、強い心を宿した戦士。
まさに『プロレスラー』そのものだった。
その若林が。
若林よりも、そして隆也よりも小柄な若者に、敗れた。
立ち合いは、若林が優勢だった。
その体格差を最大限に活かすため、大きく踏み込んで組み合った。
すぐさま腕を相手の頭に回してヘッドロック。
がっちりと抱え込む。
決まった、と誰もが思った。
しかし相手の若者は、ヘッドロックをかけられながらマットを蹴り、そしてポストを蹴り、宙を舞った。
くるりと宙返りをするように、コーナーからリング中央へと飛ぶ。
若林は体勢を崩されそうになり、思わずヘッドロックを外す。
完全に自由になった若者は背後から若林の左腕に飛びつき、その太い左腕を抱いた。
ぶら下がるように若林の左腕を伸ばす。
(飛びつき腕十字……!)
実際のプロレスの試合で、それもジュニアヘビー級の一線級の選手が魅せるような、実に見事な飛びつき式腕ひしぎ十字固めだった。
ここまで綺麗に決められて、それでもギブアップを拒んだ若林だったが、最後はレフェリーストップで若者に軍配が上がった。
試合後、アイシングをする若林とそれを見守る隆也のもとに、対戦相手の若者がやってきた。
「あの、すいません。大丈夫でしたか? 思ったよりエグい角度で入っちゃって、申し訳なかったです。初めてやったもので、あの技」
隆也と若林は目を見開いた。
あの見事な飛び関節を、今日初めてやった?
「若林さんみたいな大きくて力のある人を、どうしてもグラウンドに引き込む自信がなくて。案の定あっという間にヘッドロックに取られたんで、これはもうやるしかないなと思ったんです」
「完敗です」
若林の差し出した手を、若者はがっちりと両手で握った。
深々と頭を下げて握手を終えると、若者は隆也に向き直った。
「新藤隆也さん、でしたね。一回戦の腕ひしぎ、お見事でした。俺は内田 晋太郎(ウチダ・シンタロウ)。ここ上田道場の門下生です。よろしくお願いします」
すっ、と差し出される手。
その手を、隆也は躊躇なく握り返した。
「谷口ジムの新藤隆也です。あなたとの勝負を、楽しみにしています。……決勝で会いましょう」
内田は何も言わず、ただ笑顔でうなずいて、体育館の外へ去って行った。
(内田晋太郎……か)
ふう。
息を吐く。
そこで初めて、自分の表情が硬直していることに気付いた。
ぴしゃりと両手で頬を叩き、ストレッチを始める。
次の戦いも、気を抜けない。
しかし、心はすでに、その遥か先にいる内田晋太郎を見据えていた。
(つづく)
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プロフィール
HN:
グレート・リタ
年齢:
895
HP:
性別:
男性
誕生日:
1129/10/16
職業:
アマチュアプロレス論者兼アマチュアプロレス小説作家
趣味:
プロレス観戦とプロレス論の構築、プロレス小説の執筆
自己紹介:
要するにただのプロレス好き。
詳細プロフィール、連絡等はTwitterに。
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