グレート・リタ/愚冷刀凛汰(逢坂鈴汰)のプロレス専門ブログ。団体は新日本、W-1。選手は武藤敬司、グレート・ムタ、飯伏幸太、棚橋弘至、中邑真輔、内藤哲也、真田聖也、その他新日本、W-1勢など。Twitter :@rita_osaka
連載小説『RYUSEI』
序章
5
隆也と内田は、順当に勝ち進んでいった。
隆也の腕ひしぎが、内田の飛びつき腕十字が。
並み居る男たちからことごとくタップを奪い、気が付けば、残っているのは隆也と内田の二人だけになっていた。
そして、決勝。
隆也の目の前には、凛々しくこちらを見据える内田晋太郎の姿。
心臓が高く跳ねる。
ピンと張りつめた糸が二人を一直線に結んでいる。
その上に、ゆらゆらと危なげに揺れるものを、隆也は見た。
それこそ、勝利。
この男から勝利を手繰り寄せるのは、容易なことではない。
いかに糸を切らず、勝利だけを手元に引き寄せるか。
――ああ、これが、「プロレス」なんだ。
悟り、隆也は思わず笑みを浮かべた。
きっと内田も同じ気持ちだったのだろう。
にっと口の端を吊り上げ、隆也に視線を投げつけてきた。
(上等だ。俺だって冗談でプロレスラーを目指してるわけじゃない。しっかりプロレスをやって、プロレスで勝ってやる)
「始めっ!!」
いつの間にか、試合が始まっていた。
敗れていった参加者の、そして隆也や内田と同じくプロレスラーを志す者たちが、一斉に歓声を送る。
「新藤! 新藤! 新藤!」
「内田! 内田! 内田!」
狭い空間に、張り裂けんばかりの声が轟いた。
「新藤さん」
内田がすっと右手を差し出した。
その手を握る。
がっちりと。
「よろしくお願いします、新藤さん」
「こちらこそよろしく、内田さん」
その結ばれた手が解かれたその時、勝負が始まった。
中央から飛び下がり、腰を落とす。
相手の一挙手一投足を見逃さまいと、集中力を研ぎ澄ませる。
この試合では、打撃は禁止されている。
つまり、突然ドロップキックやフライングニールキックといった、間合いの外からの飛び打撃が飛んでくることはない。
決め手は慣れない投げ技よりも、やはり関節技。
どちらが先に相手の体勢を崩し、有利なポジションを取るか。
勝負はそこで決まる。
つつ、と額から汗が流れ落ちた。
それが瞼に伝わり、思わず瞬きした、その瞬間。
内田が動いた。
低い体勢で猛然と突進してくる。
隆也も迎え撃つべく腰を落として足を踏み出した。
手が触れ合う――。
いや、触れ合わなかった。
隆也の目の前で内田はマットを蹴り、大きく跳躍したのだ。
(なっ……!?)
内田の体が降ってくる。
覆いかぶさられるように、リングに倒れ込んだ。
内田は素早く隆也の左腕をとり、捻り上げる。
(させるかっ!)
素早く前転して体勢を立て直し、とられた腕を逆に捻り上げた。
内田の腕を背中側にくの字に折り曲げ、自らの腕を差し込んで固める。
チキンウィング・アームロックと呼ばれる関節技だ。
隆也の関節技を振りほどこうと内田が身をよじる。
隆也はそれを許すまじと力を込める。
が、少し力を入れすぎた。
力んだ隆也の腕の間をすり抜けるように、内田の体が踊った。
両の脚で隆也の体を挟み込み、強引に倒す。
そのまま腕ひしぎの体勢に入ろうとする――。
今度は隆也がそれを拒み、両者は体を離して一度睨み合った。
拍手が巻き起こる。
それはさながら、プロレスの序盤の戦いのようで。
隆也と内田は睨み合いながらも笑い合い、そして、再び戦いが始まった。
(つづく)
序章
5
隆也と内田は、順当に勝ち進んでいった。
隆也の腕ひしぎが、内田の飛びつき腕十字が。
並み居る男たちからことごとくタップを奪い、気が付けば、残っているのは隆也と内田の二人だけになっていた。
そして、決勝。
隆也の目の前には、凛々しくこちらを見据える内田晋太郎の姿。
心臓が高く跳ねる。
ピンと張りつめた糸が二人を一直線に結んでいる。
その上に、ゆらゆらと危なげに揺れるものを、隆也は見た。
それこそ、勝利。
この男から勝利を手繰り寄せるのは、容易なことではない。
いかに糸を切らず、勝利だけを手元に引き寄せるか。
――ああ、これが、「プロレス」なんだ。
悟り、隆也は思わず笑みを浮かべた。
きっと内田も同じ気持ちだったのだろう。
にっと口の端を吊り上げ、隆也に視線を投げつけてきた。
(上等だ。俺だって冗談でプロレスラーを目指してるわけじゃない。しっかりプロレスをやって、プロレスで勝ってやる)
「始めっ!!」
いつの間にか、試合が始まっていた。
敗れていった参加者の、そして隆也や内田と同じくプロレスラーを志す者たちが、一斉に歓声を送る。
「新藤! 新藤! 新藤!」
「内田! 内田! 内田!」
狭い空間に、張り裂けんばかりの声が轟いた。
「新藤さん」
内田がすっと右手を差し出した。
その手を握る。
がっちりと。
「よろしくお願いします、新藤さん」
「こちらこそよろしく、内田さん」
その結ばれた手が解かれたその時、勝負が始まった。
中央から飛び下がり、腰を落とす。
相手の一挙手一投足を見逃さまいと、集中力を研ぎ澄ませる。
この試合では、打撃は禁止されている。
つまり、突然ドロップキックやフライングニールキックといった、間合いの外からの飛び打撃が飛んでくることはない。
決め手は慣れない投げ技よりも、やはり関節技。
どちらが先に相手の体勢を崩し、有利なポジションを取るか。
勝負はそこで決まる。
つつ、と額から汗が流れ落ちた。
それが瞼に伝わり、思わず瞬きした、その瞬間。
内田が動いた。
低い体勢で猛然と突進してくる。
隆也も迎え撃つべく腰を落として足を踏み出した。
手が触れ合う――。
いや、触れ合わなかった。
隆也の目の前で内田はマットを蹴り、大きく跳躍したのだ。
(なっ……!?)
内田の体が降ってくる。
覆いかぶさられるように、リングに倒れ込んだ。
内田は素早く隆也の左腕をとり、捻り上げる。
(させるかっ!)
素早く前転して体勢を立て直し、とられた腕を逆に捻り上げた。
内田の腕を背中側にくの字に折り曲げ、自らの腕を差し込んで固める。
チキンウィング・アームロックと呼ばれる関節技だ。
隆也の関節技を振りほどこうと内田が身をよじる。
隆也はそれを許すまじと力を込める。
が、少し力を入れすぎた。
力んだ隆也の腕の間をすり抜けるように、内田の体が踊った。
両の脚で隆也の体を挟み込み、強引に倒す。
そのまま腕ひしぎの体勢に入ろうとする――。
今度は隆也がそれを拒み、両者は体を離して一度睨み合った。
拍手が巻き起こる。
それはさながら、プロレスの序盤の戦いのようで。
隆也と内田は睨み合いながらも笑い合い、そして、再び戦いが始まった。
(つづく)
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プロフィール
HN:
グレート・リタ
年齢:
895
HP:
性別:
男性
誕生日:
1129/10/16
職業:
アマチュアプロレス論者兼アマチュアプロレス小説作家
趣味:
プロレス観戦とプロレス論の構築、プロレス小説の執筆
自己紹介:
要するにただのプロレス好き。
詳細プロフィール、連絡等はTwitterに。
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