グレート・リタ/愚冷刀凛汰(逢坂鈴汰)のプロレス専門ブログ。団体は新日本、W-1。選手は武藤敬司、グレート・ムタ、飯伏幸太、棚橋弘至、中邑真輔、内藤哲也、真田聖也、その他新日本、W-1勢など。Twitter :@rita_osaka
連載小説『RYUSEI』
序章
3
開会の挨拶が終わり、組み合わせ発表。
30分間の休憩・ウォーミングアップ時間の後、試合が開始された。
隆也の出場は、第一試合。
一発目から出番となる。
(望むところだ……!)
ぐっ、と拳を握りしめ、そしてゆっくりと解いた。
力が入りすぎている。
リラックスだ。
落ち着いて、自然体で。
自然体で。
(……よし!)
一歩一歩を大事に、リングに上がる。
今大会のリングは、プロレスのリングと同じ。
3本のロープに囲まれた、マットのジャングルだ。
青コーナーのマットに陣取る。
対角、赤コーナーに上がってきた選手は、隆也よりも分厚い体と、太い首と太い腕を持っていた。
柔道家のような体つきだ。
案外、本当に柔道をやっていたのかもしれない。
レフェリーとして、上田信明がリングに上がった。
「打撃なし、3カウント、場外カウントなし。場外に出た場合は試合を一時中断し、両コーナーからの仕切り直しとする。勝敗はレフェリーストップ、またはギブアップのみ。もちろん投げ技はありだが、それだけで勝負が決まるわけではないことを忘れるな。いくら綺麗なジャーマン・スープレックスを繰り出したところで、カウントはない。あくまでこれは、サブミッション・レスリングの大会だ。いいな?」
隆也と、相手選手が頷く。
「では、始めっ!!」
カーン!!
ゴングが打ち鳴らされる。
その瞬間、隆也は確かに感じた。
リングを取り囲む、超満員の観衆と、会場を埋め尽くす歓声。
その、圧倒的なエネルギーを。
(……やってやる!)
相手選手は腰を落とし、こちらをうかがっている。
レスリングのような、柔道のような、独特の構え。
まともに力比べをすれば、隆也は絶対的に不利だ。
(なら!!)
隆也は突進した。
その隆也をとらえようと、相手選手が手を伸ばす。
突き出された2本の太い腕。
目でその腕の動きを追いながら、隆也はがくんと膝を曲げた。
膝から崩れ落ちるかのように体勢を低くし、腕を潜り抜ける。
滑るように相手選手の胴に手を回し、両脚を強く踏ん張った。
「だあああっ!!」
叫び、相手の分厚い体を引っこ抜くように持ち上げ、自ら後ろに倒れ込むように投げ捨てた。
ひどく不格好な投げだ。
フロント・スープレックス……いや、正面からのバックドロップのような形か。
が、今は形にこだわっている場合ではない。
(どうせちゃんと練習していない俺達に、綺麗な技なんてできやしない。とにかく勝つために、相手にダメージを与える投げを!)
素早く立ち上がり、飛びかかるように相手選手に覆いかぶさる。
相手の右腕を自分の胸に押し付け、脚をかけて後ろに倒れ込む。
腕ひしぎ十字固め。
若林とのスパーリングで鍛えられた、隆也の十八番である。
相手は何とか振りほどこうともがくが、がっちり極まっている腕を外す力はない。
シンプルだが、一度極まると抜け出すのは困難。
それが、腕ひしぎ十字固めという技だ。
耐えかねた相手は、空いている左手で隆也の膝を数回叩いた。
タップである。ギブアップの意思表示だ。
「そこまで!!」
今度は試合終了のゴングが打ち鳴らされ、隆也は技を解いた。
相手選手は極められていた右手をさすりながら、ゆっくりリングを降りて行った。
その後ろ姿に一礼し、隆也もリングを降りた。
わずか1分ほどの試合だった。
が、隆也の全身には大粒の汗が浮き出ていた。
スパーリングとは次元が違うほどハードだった。
たかが1分で、この汗の量ならば、20分30分と戦うプロレスラーの体力とはいったいどうなっているのか。
わずかに芽生えた不安をスポーツドリンクと一緒に飲みこみ、隆は第2試合 若林康夫の試合に目を向けた。
相手は……。
「あいつは……!」
若林と向き合っていたのは、開会挨拶の時に隆也とにらみ合った、あの若者である。
体の厚みも、線の太さも、若林が上である。
しかし若者は、先ほどよりも大きなエネルギーを体中に充満させているような、そんな威圧感に満ちていた。
「始めっ!!」
ゴングが、鳴った。
(つづく)
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プロフィール
HN:
グレート・リタ
年齢:
895
HP:
性別:
男性
誕生日:
1129/10/16
職業:
アマチュアプロレス論者兼アマチュアプロレス小説作家
趣味:
プロレス観戦とプロレス論の構築、プロレス小説の執筆
自己紹介:
要するにただのプロレス好き。
詳細プロフィール、連絡等はTwitterに。
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