グレート・リタ/愚冷刀凛汰(逢坂鈴汰)のプロレス専門ブログ。団体は新日本、W-1。選手は武藤敬司、グレート・ムタ、飯伏幸太、棚橋弘至、中邑真輔、内藤哲也、真田聖也、その他新日本、W-1勢など。Twitter :@rita_osaka
連載小説『RYUSEI』
第1章 ジュニアの象徴
2
数多の歓声を内に取り込み、隆也は裕太郎を睨み付けた。
裕太郎も鋭い眼光をこちらに飛ばしてきている。
短い攻防だが、二人の体には汗が浮かび、じんわりと流れ落ちていた。
プロレスとは過酷なものだ。
しかし、ここで弱みを見せるな。
プロレスラーは、どんな時でも、強くあるんだ。
リング中央で、二人は再び組み合った。
今度は隆也が主導権を握った。
裕太郎の、スポーツマンライクに刈り上げられた頭をがっちりと脇に抱え込む。
ヘッドロック。
極めて基本的な関節技ながら、必殺技にしても遜色のないほどの威力を持っている。
隆也のかつての先輩、若林康夫がこの技を得意にしていた。
「うあああああああああ!」
痛みに叫ぶ裕太郎の頭をさらに締め上げる。
関節技の攻防は見た目以上にハードだ。
汗が噴き出す。
ぬるり。
ロックしている手が汗で滑り、わずかに力が弱まった。
しまった――。
裕太郎はアマレスの猛者だ。
この隙を逃すわけがない。
息を吹き返したように、裕太郎が隆也の腰を抱いた。
クレーンで思い切り吊られたかのような、凄まじい力が隆也の足をマットから引きはがす。
バックドロップ――!
何と速く、なんと力強いバックドロップだろうか。
道場で受け身の練習をする際、幾度となくコーチから受けたバックドロップ。
もちろんコーチは加減しているだろうが、そのバックドロップよりも数段強烈だ。
口の中に血の味が広がる。
どこかが切れたようだ。
裕太郎に髪を掴まれ、無理やりに引き起こされる。
反撃しなければ。
反撃を――。
何とか糸口を掴もうと裕太郎の顔にエルボーを打ち込む。
ぐらりと裕太郎が揺れた。
――よし!
裕太郎に背を向け、隆也はロープに向かって飛んだ。
ぐん、とロープに背中を預け、その反動そのままにマットを蹴る。
体が交錯する刹那、裕太郎の顎に思いきりエルボーを叩き込んだ。
これこそ隆也が身に着けた新たな技の一つ、ジャンピングエルボーアタックだ。
裕太郎はエルボーのダメージと、飛んできた隆也の勢いに押され、マットに倒れている。
勝つには今しかない!
裕太郎を引き起こす。
思い出すんだ。道場での練習を。
道場で相手にしていたのは、ほとんどがダミーの人形だ。
生きた人間にこの技をかけたことは一度しかない。
しかし、自信はある。
決めてみせる!
背後から裕太郎の腰に手を回し、思いっきり背後に体を反らせた。
岩石のように重い裕太郎の体。
その岩石を。
投げる!
「らあああああああっ!」
ジャーマン・スープレックス。
この日一番大きな音を立ててマットが波立った。
レフェリーがカウントを取る。
1、2--。
3。
ゴングが打ち鳴らされ、ようやく隆也と裕太郎は崩れ落ちた。
――新藤隆也選手の勝利です。
リングアナウンサーの声と、拍手と、歓声をシャワーのように浴びながら、隆也はしばらく天井を見つめていた。
(続く)
第1章 ジュニアの象徴
2
数多の歓声を内に取り込み、隆也は裕太郎を睨み付けた。
裕太郎も鋭い眼光をこちらに飛ばしてきている。
短い攻防だが、二人の体には汗が浮かび、じんわりと流れ落ちていた。
プロレスとは過酷なものだ。
しかし、ここで弱みを見せるな。
プロレスラーは、どんな時でも、強くあるんだ。
リング中央で、二人は再び組み合った。
今度は隆也が主導権を握った。
裕太郎の、スポーツマンライクに刈り上げられた頭をがっちりと脇に抱え込む。
ヘッドロック。
極めて基本的な関節技ながら、必殺技にしても遜色のないほどの威力を持っている。
隆也のかつての先輩、若林康夫がこの技を得意にしていた。
「うあああああああああ!」
痛みに叫ぶ裕太郎の頭をさらに締め上げる。
関節技の攻防は見た目以上にハードだ。
汗が噴き出す。
ぬるり。
ロックしている手が汗で滑り、わずかに力が弱まった。
しまった――。
裕太郎はアマレスの猛者だ。
この隙を逃すわけがない。
息を吹き返したように、裕太郎が隆也の腰を抱いた。
クレーンで思い切り吊られたかのような、凄まじい力が隆也の足をマットから引きはがす。
バックドロップ――!
何と速く、なんと力強いバックドロップだろうか。
道場で受け身の練習をする際、幾度となくコーチから受けたバックドロップ。
もちろんコーチは加減しているだろうが、そのバックドロップよりも数段強烈だ。
口の中に血の味が広がる。
どこかが切れたようだ。
裕太郎に髪を掴まれ、無理やりに引き起こされる。
反撃しなければ。
反撃を――。
何とか糸口を掴もうと裕太郎の顔にエルボーを打ち込む。
ぐらりと裕太郎が揺れた。
――よし!
裕太郎に背を向け、隆也はロープに向かって飛んだ。
ぐん、とロープに背中を預け、その反動そのままにマットを蹴る。
体が交錯する刹那、裕太郎の顎に思いきりエルボーを叩き込んだ。
これこそ隆也が身に着けた新たな技の一つ、ジャンピングエルボーアタックだ。
裕太郎はエルボーのダメージと、飛んできた隆也の勢いに押され、マットに倒れている。
勝つには今しかない!
裕太郎を引き起こす。
思い出すんだ。道場での練習を。
道場で相手にしていたのは、ほとんどがダミーの人形だ。
生きた人間にこの技をかけたことは一度しかない。
しかし、自信はある。
決めてみせる!
背後から裕太郎の腰に手を回し、思いっきり背後に体を反らせた。
岩石のように重い裕太郎の体。
その岩石を。
投げる!
「らあああああああっ!」
ジャーマン・スープレックス。
この日一番大きな音を立ててマットが波立った。
レフェリーがカウントを取る。
1、2--。
3。
ゴングが打ち鳴らされ、ようやく隆也と裕太郎は崩れ落ちた。
――新藤隆也選手の勝利です。
リングアナウンサーの声と、拍手と、歓声をシャワーのように浴びながら、隆也はしばらく天井を見つめていた。
(続く)
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プロフィール
HN:
グレート・リタ
年齢:
895
HP:
性別:
男性
誕生日:
1129/10/16
職業:
アマチュアプロレス論者兼アマチュアプロレス小説作家
趣味:
プロレス観戦とプロレス論の構築、プロレス小説の執筆
自己紹介:
要するにただのプロレス好き。
詳細プロフィール、連絡等はTwitterに。
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